「ディレクターの視点:3周年を3人で振り返る」のまとめ
公式ニュースにて「ディレクターの視点:3周年を3人で振り返る」が公開されています。
初代オーバーウォッチとの違い
- 初代:各チームが共通のビジョンを持ち、魔法のような開発体験だった
- オーバーウォッチ2:ビジョンが時間とともに変化し、チーム一体感の再構築が必要だった
各ディレクターの経験
アレック・ドーソン(アシスタント・ゲーム・ディレクター)
- ハースストーンチーム出身で、2022年夏にオーバーウォッチチームに参加
- シーズン9でパークシステムを提案し、大胆なゲームプレイ変更にチャレンジ
- 当初は「聖域」とも言える既存システムを変更する恐怖があったが、結果的に成功
ディオン
- ビジュアル統一感、ゲームプレイ革新性、サプライズ感のバランスの重要性を学習
- 既存人気ヒーローの進化と新ヒーロー(ラマットラ、キリコ、マウガ、フレイヤ、ウーヤンなど)の追加の難しさを実感
重要な転換点
- シーズン15のパーク追加とシーズン16のスタジアム追加が大きな成功
- 「オーバーウォッチが帰ってきた!」というコミュニティの反応を得られた
- チーム全体が再び共通のビジョンを持てるようになった
今後の展開
- 年2回の大型アップデートを継続予定
- 来年初めにはシーズン18以上の大きな変化を予定
- ビジュアル面とテーマ面でより大胆な変化が待っている
- オーバーウォッチユニバースの未探索部分に光を当てる計画
開発チームの成長
3年間を通じて、アート、エンジニアリング、ナラティブ、ゲームプレイの各チームの協力体制が確立され、リスクを恐れずに挑戦する文化が根付いたことが強調されています。
この記事は、オーバーウォッチ2の過去3年間の困難と成長、そして今後のさらなる進化への意気込みを示した開発チームからのメッセージとなっています。
以下は公開された内容の全文です。
皆さん、こんにちは!明日「オーバーウォッチ 2」がついに3周年を迎えます。3年という月日…私としては、このゲームがこれほど長い間続いていることに、どこか現実離れしたような感覚を覚えてしまいます。
さて、アニバーサリーのイベントは一般的に過去を振り返ってお祝いするだけのものではありません。それは見方を変えれば、未来に向けた約束を意味する特別な機会…特に今年は「OW」シリーズにとって重要な岐路になるでしょう。ということで、今回の「ディレクターの視点」では、ディオン、アレック、そして私アーロンの「OW2」ディレクター3人が先週行った対談の内容を以下にまとめました。これまでの「OW2」の経緯とそこから私たちが得たもの、そして今後のプランについて触れています。それでは、私たちのトークをお楽しみください。
アーロン:初代「オーバーウォッチ」の制作過程は、ちょっと魔法のようにすら感じられた。すべてがあまりにも上手く、簡単に組み合わさっていったというか。アート、エンジニアリング、デザイン、プロダクション、オーディオの各チームが、このゲームがどんな作品になるかというはっきりとしたビジョンを理解し、共有していたんだよね。一生忘れられない体験になったし、とても大切な思い出だよ。
でも、「オーバーウォッチ 2」の開発が進んでいくにつれて、そうした魔法が少し薄れていったように感じた。「OW2」の開発の経緯に詳しい人なら、この続編に関するビジョンが時間とともに変化していったことも知っていると思う。チームと協同で開発に当たっているという感覚が徐々に薄れ、この作品がどうあるべきかを定義しなおして調整する仕事は自分たち次第という感じになっていったんだ。
ディオン:続編の開発が始まった時点では、「オーバーウォッチ」の世界観を引き継いで発展させるだけじゃなく、各マップやヒーロー、細かい要素のひとつひとつにリアリティや生き生きとした描写を感じられるように目指した。
アーロン:「オーバーウォッチ」の戦略を新たに練り直した際、さらに注力することになった重要課題の1つがPvPの競技性向上だった。対戦ゲームとしての側面により集中するべく、才能豊かで壮大なアイデアを持つ新たなメンバーたちをチームに加えたわけだけど、ここにいるアシスタント・ゲーム・ディレクターのアレック・ドーソンもその1人だ。
アレック:じつを言うと、チーム4(「OW」開発チーム)での僕の経験は、ここにいる2人の巨匠のものと少し違う。僕がブリザードで最初に担当したのはハースストーンで、「Voyage」から「Sunken City」までの拡張パックに携わったんだ。素晴らしい体験だったけれど、やがてもっと違うものに挑戦してみたいという衝動に駆られるようになってね。それでもう少し小規模なプロジェクトに参加したんだけど、残念ながらそっちはうまくいかず、結局は芳しい結果を得られなかった。あの頃は、僕のキャリアがどうなるのかわからない恐怖の時期だったけど、それでも新たな居場所を探すことにしたんだ。「オーバーウォッチ」は以前から好きな作品で、ローンチからずっとプレイしていた。同僚や友達と一緒に、定期的にオーバーウォッチ リーグのマッチに行っていたほどだよ。あ、ちなみにGladiatorsのカスタム着ぐるみも持ってるんだ。「守りを固める!」ってね(…ごめん、スコット)。
2022年の夏に僕が「OW」開発チームの戸を叩くと、みんな温かく迎えてくれた。最高に幸せな気分だったね。これ以上ないくらい、いるべき場所にいると感じたよ。ローンチに向けてうまく軌道に乗るまでには少し時間がかかって、2022年の10月以降もそういう状態が続いた。チームの重要な役割を担う新たなリード(僕自身も含めて)が加わったりもしたからね。でも、有意義な時間だった。「オーバーウォッチ 2」が独自のアイデンティティを確立していく中で、僕たち開発チームも信頼を深めていったんだ。
時間が経つにつれて、いろいろな面でチームが改善されていると感じた。そのおかげで、少し離れた所から全体を見直して、「オーバーウォッチ」の1年をどうするかの計画をより体系的に考えることができた。より意義深いシーズンにするにはどうするか、プレイヤーをあっと驚かせるにはどうするか。それ以上の何かを計画に含める必要があったんだ。
アーロン:それで君がプレゼンしたのがあのアイデアだったんだよね。
アレック:シーズン9の直後に「パーク」のアイデアをね。僕のキャリアの中でも、特にチャレンジングな経験の1つだった。「ゲームに新たな軸を加えることで、シーズン・アップデートの選択肢を広げる」、「マッチ中にヒーローの変更を行わず、使っているヒーローを少し変えられるようにする」、「しかも、大幅なゲームプレイの変化でオーバーウォッチのプレイヤーを驚かすことができる」…理論上は、完璧なアイデアだった。
とはいえ、ゲームプレイの中には、システムとして完全に確立されてしまっていて「聖域」のごとく手出しできない部分もあって…。そうした部分にまで踏み込んで変えることで、逆に欠点を生んでしまったり、「OW」の魅力を損なってしまったりしたらという恐怖が常につきまとっていた。僕にとっても、他の大勢のチームメンバーにとっても、あのゲームプレイの黄金サイクルというのは、ある意味で畏敬の対象だったんだ。
アーロン:でも、時間を経るごとにコミュニティも変更点や改善を評価してくれて、リスク・テイクが実を結んでいって。徐々に変更点を大がかりに、大胆にしていった。シーズン15でのパークの追加とシーズン16でのスタジアムの追加には本当に心躍ったよ。
「『オーバーウォッチ』が帰ってきた!」という感想をくれた人がいたけど、チームも同じ思いだった。ふたたび、チーム全体が共通のビジョンを持ってゲーム開発を進められるようになって、初代の開発でチームが味わったあの魔法のような感覚が、久しぶりに帰ってきていたからね。
ディオン:「オーバーウォッチ 2」開発はチャレンジングかつ新鮮だった。ゲームの観点からも、僕個人にとってもね。リーダーシップの重要性、周囲に耳を傾けることの大切さ、変化を受け入れることの意義…毎年、新たな教訓を学んだよ。あと、ビジュアル面の統一感、ゲームプレイ要素の革新性、サプライズ感のバランスが重要だということも勉強できた。ウィンストンやトレーサーをはじめとした人気のヒーローを進化させつつ、ラマットラ、キリコ、マウガ、フレイヤ、ウーヤンなどの新顔を加えるという、「オーバーウォッチ」の世界観を大切にしながら、新しい領域へと踏み込むことの難しさも痛感したな。
アレック:僕たちの使命はプレイヤーを驚かせて楽しませることだけど、時には中長期的な視野でゲームを改善することも重要になる。そしてその改善のためには、場合によって、現状を変えなきゃいけない。パークの導入は漸次的に進めていったけど、それでも恐怖感はぬぐい切れなかった。「OW」の魅力を汚してしまっているのではないか、という疑念がね。
でも、この時の経験から、定番やお決まりのパターンにばかり固執してはいけないということを学べた。今では、リスクを取ることにもずっと前向きだし、困難なチャレンジにだって進んで挑んでいるよ。僕たちチームは、今もそういうチャレンジにいくつも挑んでいる。チームとして上手く協同する方法や、チームとしての自分たちに何ができるかをしっかりと学ぶことができた今、かつて抱いていたようなぬぐい切れない恐怖はもうあまりないと思う。
ディオン:アート、エンジニアリング、ナラティブ、ゲームプレイの各チームが協力し合って歩んできたこの3年間は、素晴らしいものだった。開発チームとコミュニティ全体が重ねてきた成長は、僕にとって大きな誇りだよ。素晴らしいヒーローやマップを次々と実装できたしね。特にラマットラ、ジュノ、ベンチャー、それと…そうだった、このヒーローはまだ発表していなかったな。この4人は個人的にプレイするのが特に好きなヒーローだ。NEW JUNK CITYやRUNASAPIのディテールはじつに刺激的だし、スタジアムやパークの導入で生まれた新たなゲームプレイも面白い。今もたくさんのアイデアを試したり、既存の要素に磨きをかけたり、初代「オーバーウォッチ」で感じた魔法を思い起こさせるような一体感でさまざまな実験をしたりしている。今後の展開がますます楽しみだ。
プレイヤーのみんなにはあまり多くを語れないけれど、これからビジュアル面とテーマ面で従来以上に大胆な変化が待っているということも言っておこう。「オーバーウォッチ」ユニバースの中であまり語られてこなかった部分に光を当て、コアなファンですら驚くようなスタイルとストーリーテリングに挑む予定だ。「オーバーウォッチ」という素晴らしいタイトルのもとに集まってくれたチームとコミュニティのみんなには、この場を借りて感謝したい。このゲームが持つ可能性を広げられたのもひとえに、チームメンバーの日々の信頼と情熱、そしてコミュニティのインスピレーションのおかげだ。これからも、チームやコミュニティのみんなと共同でアイデアを生み出して形にし、「オーバーウォッチ」ユニバースを一緒に楽しめたらと思っている。
アーロン:このチームを心から誇りに思う。本当に素晴らしい集団になったよ。これまでに成し遂げてきた功績も素晴らしいものだけど、まだまだ終わりじゃない。
いかがだったでしょうか?前回の「ディレクターの視点」では、毎年2回の大型アップデートをお届けし、チームのリスク・テイクの精神をさらに高めていくとお話ししました。対談のとおり、私たちもシーズン15のパーク・システムのような大型コンテンツを計画するたび、「このゲームを大きく変えすぎなんじゃないか」という恐怖に襲われますが、その一方で、各シーズンを振り返った時「毎回開発が大がかりに感じてしまうとはいえ、もっとやれたんじゃないか」と思ってしまうのも事実です。これまでの積極的なアプローチが功を奏し、このシーズン18でついに「シーズンの中旬で新要素を掘り下げる」という目標を十分に達成できたと思います。もちろん、来年の初めにはシーズン18以上に大きな変化を加える予定です。今後も「オーバーウォッチ」というタイトルが持つあり方と可能性を他のチームメンバーとコミュニティとともに模索しつつ、より高い目標のもとさらなる変化を加えていくので、皆さんどうぞご期待ください。
この3年間、私たちとともに歩んでくださったコミュニティの皆さんにあらためて感謝申し上げます。サプライズに満ちた次の3年に向けて、引き続き一緒に冒険できれば幸いです。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。ともに素晴らしいゲームを作っていきましょう!